半導体メーカが公開している市販デバイスのモデルパラメータを、LTspiceに追加する手順について例を示す。半導体メーカによっては、データシートにモデルパラメータを記載していたりするが、これも同様にして取り込むことができる。モデルパラメータが公開されていない場合は、有料のモデルを購入するか、実測データへのフィッティング(または市販のパラメータ抽出ソフト)によりパラメータ推定することになるが、半導体デバイスモデルのパラメータは、等価回路を用いたフィッティングパラメータではなく、寸法および物性に関する定数であるため、設定するためには半導体デバイス物理の知識が必要になる。ここでは、半導体メーカが提供するモデルの例として、フェアチャイルド社のスイッチング用MOSFET(エンハンスメント型)のモデルを利用してみる。
- フェアチャイルドセミコンダクター社のシミュレーションモデルのページでMy Fairchild の文字をクリック
- ログインページのNot Registered?欄でアカウントを作成
- 次回からは、このアカウントでダウンロードできるので、登録メールアドレスとパスワードを記録しておく。確認のための電子メールが送られてくるので、アクティベーションのリンク先をクリックする。アクティベーションはすぐに完了する。
- フェアチャイルドセミコンダクター社のシミュレーションモデルのページに戻りPSPICEをクリック
- LTspiceのページもあるが、高電圧MOSFETファミリーのみ提供されているようなので、PSPICE用のモデルを使用する。
- MOSFETをクリックすると、型番のリストが表示されるので、2N7000 をクリック
- データシートのページが表示されるので、一番下のほうの、Models欄の Electricalをクリック
- ログインページで、登録したメールアドレスとパスワードを入力しログインすると、Download Model Fileのページが表示される
- Download Nowボタンをクリックすると、ダウンロードが始まる
- 2N7000.modというファイル名で保存されるので、2N7000.subという名前にリネームする(拡張子modは、通常ムービークリップファイルに関連付けられている)
- [参考] デバイスモデルのライブラリには、拡張子libが使用されるが、ここでは、モデルがサブサーキットで表されていることが分かるように、拡張子をsubとした。このモデルは、動作モデルではなく物理モデルであるが、モデリング精度を高めるため、複数の半導体デバイスと寄生素子および熱モデルの等価回路を組み合わせたサブサーキットによって記述されている。
- [LTspice XVII] C:\Users\ユーザ名\Documents\LTspiceXVII\lib\sub ディレクトリに 2N7000.subを保存または 回路図ファイルと同じフォルダに保存(マクロモデルの追加の項を参照)
- [LTspice IV] C:\Program Files\LTC\LTspiceIV\lib\cmp ディレクトリに 2N7000.subを保存
- [注意] 上記説明では、どの回路からも使用できるように、LTspiceの標準ディレクトリにサブサーキットを置いたが、回路図ファイル(.asc)を設計ドキュメントとして管理または配付する場合には、マクロモデルの記述ファイルも、一緒にしておかないと、後日、シミュレーションを再現することができなくなる。このため、サブサーキットやモデルパラメータのファイルは、回路図ファイルと同じディレクトリにコピーして使用したほうが安心。回路図ファイル(正確にはネットリストファイル)と同じディレクトリにあるサブサーキットやライブラリは、デフォルトで検索されるので、回路図中にパスを指定しなくてもよい。
- [componentボタン] - [nmos4] でMOSFET(4端子タイプ)のシンボルを呼び出し、回路図エディタに配置
- MOSFETのシンボルを、CTRL + 右クリックし、Component Attribute Editorで Prefix = X, Value = 2N7000 を入力
- Prefix = X はサブサーキットを表す。シミュレータに組み込みのn-ch MOSFETモデルの場合は、MN(nmos4シンボルのデフォルト)となる。
- Value は、モデルファイルの内容を確認して、記載されているデバイス名を指定する。
- [参考] メーカから提供されているディスクリートMOSFETは、保護ダイオードや寄生素子を含めてモデル化するため、サブサーキットとなっていることが多い。サブサーキットを呼び出すため、Prifix = X に変更するか、シンボルを自分で作る必要がある。
- SPICE Directiveボタン(.opボタン)をクリックし、.lib 2N7000.sub (先程、C:\Program Files\LTC\LTspiceIV\lib\cmp に保存したファイル名)を入力
- .lib命令を回路図エディタに配置
- .lib 命令は、本来は、.SUBCKT(マクロモデル)や.MODEL(デバイスパラメータ)を多数集めたライブラリから、回路図に指定されたものだけを呼び出してインクルードする
- 複数のファイルを指定する必要がある場合は、.libを複数書いてもよい
- .lib 命令は、ネットワーク上のマクロモデルやライブラリファイルをURIで指定することもできる
- 回路図を作成する
- 2N7000 は3端子のMOSFETであるが、モデルは4端子となっている。Bに相当する電極は、電気的な電圧ではなく、温度を電圧で与えることにより、温度に対する特性の変化をシミュレーションすることができる。ここでは、4端子のMOSFETシンボルを流用したが、ドキュメントとしては、誤りを生ずる恐れがあるので、専用のシンボルを作成した方がよい。シンボルの作成方法は、サブサーキットの作成(階層化)の項を参照。
[注意] LTspiceと一緒にインストールされるオリジナルのstandard.bjt等のモデルパラメータのライブラリを編集して、新しいデバイスを追加する方法が、LTspiceのHelpやネット上で紹介されている。この方法だと、デバイスの型番リストから所望のデバイスを探すことができて便利だが、LTspiceのアップデートの際に上書きされてしまうので、ユーザライブラリは、標準ライブラリと分けた方がよいだろう。
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