1.2 SPICE の予備知識 |
---|
1.2.1 SPICE の概要 |
SPICE (Simulation Program with Integrated Circuit Emphasis) は、UCB(カリフォルニア大学バークレー校)で開発されたアナログ電子回路シミュレータである。オリジナルのソースコードは、UCB より無料で公開されている。アナログ電子回路シミュレータは、回路方程式(連立非線形微分方程式)を解くプログラムに過ぎないが、各種の半導体デバイスの特性を表すモデル式が組み込まれているので、トランジスタやダイオードの特性を測定してモデル化すれば、実際に電子回路を製作しなくても設計した電子回路の詳細な特性を簡単に知ることができる回路設計には不可欠なツールである。
SPICEは、ソースコードが公開されているので、このプログラムを元に、シミュレーション精度・速度および操作性を高めた多くの商用シミュレータが開発された。現在、集積回路開発では、SPICEをベースとして開発された HSPICE(現在、Synopsys社が販売)が標準的に使用されている。本実習では、VLSI設計室にインストールされているHSPICEを使用する。基本操作や機能はUCBのSPICEと全く同じである。
アナログ電子回路シミュレータの「アナログ」というのは、電圧や電流などのアナログ量をシミュレーションできるということを指している。従って、アナログ回路とディジタル回路のどちらの開発でも使用される。
1.2.2 SPICE (HSPICE) の機能 |
SPICE を用いて、表1.1のような解析を実施できるが、本実習では、最も基本的なDC解析(電流-電圧特性)、TRAN解析(過渡応答特性)を行う。
表1.1 SPICEが行う解析の種類
SPICEでの名称 | 解析内容 | 主に対象となる回路形式 |
---|---|---|
DC解析 | 直流特性解析 | Analog/Digital |
AC解析 | 交流小信号周波数特性解析 | Analog |
TRAN解析 | 時間領域過渡応答解析 | Analog/Digital |
SENS解析 | デバイスパラメータ変動に対する感度解析 | Analog/Digital |
NOISE解析 | デバイスが発生する雑音レベルの解析 | Analog |
TF解析 | 小信号伝達関数の解析 | Analog |
DISTO解析 | 歪みによる高調波の解析 | Analog |
FOUR解析 | フーリエ解析、TRANと一緒に実行 | Analog/Digital |
1.2.3 SPICE (HSPICE) の実行に必用なデータ |
SPICE は、入力情報として 1.ネットリスト、2.シミュレーション制御コマンド、3.デバイスモデルパラメータの3種類のデータを必要とする(表1.2)。通常、ネットリストとシミュレーション制御コマンドは1つのファイルに記述し、これをSPICE入力ファイルと呼ぶ。また、デバイスモデルパラメータを何種類かまとめて記述したファイル(通常、半導体メーカから供給される)をデバイスモデルライブラリと呼び、SPICE入力ファイルの中でこのファイルを呼び出すように指定する。
|
![]() 図1.1 SPICEシミュレーションにおけるデータの流れ |
表1.2 SPICEの実行に必要な入力データの種類
データの種類 | 意味 | 記述場所 |
---|---|---|
ネットリスト | 部品(デバイス)の接続情報とデバイスの値(抵抗値、容量値、トランジスタの寸法など) | SPICE入力ファイル |
シミュレーション制御コマンド | 解析の種類、変数の範囲、パラメータの値指定など | SPICE入力ファイル |
デバイスモデルパラメータ | 半導体デバイスの特性を計算するために必要なパラメータ値 | デバイスモデル・ライブラリ・ファイル |
1.2.4 回路図エディタについて |
小規模な回路では、ネットリストは便利な表記法であるが、少し大きい回路になると、人為的ミスが発生する恐れがある。このため、回路エディタというGUIにより回路図を入力するCADツールを使用するのが一般的だ。回路図エディタは、入力された回路図からシミュレータの入力形式であるネットリストを自動生成し、SPICE入力ファイルを作成する機能を持っている。しかし、本実習では回路図エディタを使用せず、ネットリストを直接編集する。ネットリスト記述には下記のような利点があるためだ。
Copyright © 2001 Akio Kitagawa, Kanazawa Univ. All rights reserved.