
以下に、今回用意した主要部品を示しますが、必要なら他の部品を使用してもかまいません。
マイクロコントローラ
- Cypress CY8C28445-24PVXI

- 回路構成を自由に変更できるPSoC1シリーズの入手しやすいMCUです。14bitデルタ-シグマ型ADCの4ch並列動作(多くのマイコンはADCを時分割動作させて多チャンネル化しているので、同時にサンプリングできない)、9bitDACの4ch並列動作、CapSens(タッチセンサ)、SSOPパッケージ(半田付けができて小型)、3V-5.25Vの電源電圧範囲(レベル変換しないで他の回路と直結できる)、25mAのGPIO電流(LED直結可能)、フラッシュメモリが16Kb(EEPROMエミュレーションにより電池が無くてもキャリブレーションデータを保存可能)などの特長があり、アナログ性能に重点が置かれているようです。CapSensや複数チャネル同時サンプリングが必要なければ、電子工作では定番となっている CY8C29466-24PXI に置き換えられます。ピン配置も同じです。
Bluetooth通信モジュール
- マイクロテクニカRBT-001 + 80FB990

- 技術適合証明(技適)を取得したものでないと電波法違反となるため、技適取得済みで、3.3V, 5V電源に対応可能で、クラス2以上(送信出力2.5mW = 数10程度の通信距離)、Ver.2.1(スマートフォンに対応)、通販で入手できて、あまり高価ではないという条件で選びましたが、目的に合致すればどれでもかまいません。今回使用するRBT-001(通信モジュール本体)は、3.0V電源という仕様なので、5Vまたは3.3Vから3.0Vにレベルシフト(論理振幅を変換すること)を行うための80FB990というオプション基板を一緒に使用します。レベルシフタは、RBT-001の説明書を見て自作することもできます。
電源
電源の仕様により、容量(mAh)、放電電流(mA)、寸法、重量が変わり、使えるアプリケーションも変わりますが、考えだしたらきりがないので、初期の試作段階では、低消費電力化や小型化は後で考えることにして、とりあえず作ってしまいます。
- 電源電圧
- MCUとBluetoothモジュールは、3.3Vでも動作しますが、5V以上の電源を必要とするセンサーが多いため、汎用性を考えて、5V電源を使用します。後で、電源回路の3端子レギュレータ(後述)を3.3V用に差し替えれば、3.3V電源で動作させることができ、電池の本数を減らすことができます。電源電圧を上昇させるBoost DC-DCコンバータというモジュールも市販されていて、電池1本で5Vや3.3V電源の回路を動作させることもできるのですが、雑音の対策や許容電流の見積もりが複雑になるため今回は使用しません。
- 電池
- Bluetoothモジュールの説明書によると、消費電流は、瞬間25mA, 平均9mAとなっています。MCUの仕様書では、5V電源で平均8mA(@クロック周波数3MHz)となっています。従って、少なくとも、33mA程度の電流が流せる電源が必要です。市販のコイン型リチウム電池(CR2032)の最大放電電流は、3mA程度(通常は1mA以下で使用)となり、1本ではBluetoothモジュールやMCUを駆動できません。MCUのクロック周波数を上げればさらに消費電力が増えますし、さらに、LEDや光センサは、10mA - 20mA, ガスセンサや化学センサは、50mA程度必要な場合が多いので、全体で、100mA程度の放電能力のある電池とレギュレータが欲しいところです。このため、寸法が多少大きくなりますが、余裕を見て、電池は単3または単4を4本(6V)を使用します。3.3V動作の場合は、3本(4.5V)でもかまいません。容量は、アルカリ乾電池で数100mAh〜1000mAh(連続)ぐらいなので、回路が必要とする平均電流を23mAとすると、電池の内部抵抗(電池自身の消費電力)を無視すれば40時間程度持つという計算になります。もっと長時間持たせる必要があるアプリケーションの場合は、MCUのスリープ機能を利用するか、BLEやANT等の低消費電力通信規格の通信モジュールを使用してください。
ちなみに、充電電池は電圧が低いので4本では5V電源として使えません。
- LDO(Low Drop Out)電圧レギュレータ

- 電池の電圧は、5Vではなく、また時間とともに降下するので、電圧を一定に保つ電圧レギュレータICを使用して、電池の電圧が変化しても、5.0V一定の電源電圧となるようにします。前述のように最大100mA程度の出力電流が欲しいので、出力の負荷が100mAのときに、入出力間電圧(ドロップ電圧)が1.0V以下(入力6V - 出力5V)の電圧レギュレータが必要です。また、入出力間電圧が小さいレギュレータほど、入力電圧(電池の電圧)が下がっても動作するため、長時間電池駆動できるようになります。
入出力間電圧が1V以下のレギュレータは、LDOまたは低損失レギュレータという名称で市販されていますので、この中から、100mA以上出力電流が取り出せる製品を選びます。通常、レギュレータ自体の消費電流は、数mA以下なので無視できます。ただし、スリープ状態での消費電力が問題になる場合は、低消費電力品を探す必要があります。また、低温や高温で使用する場合は、温度特性にも注意が必要です(どちらかというと、高温や低温ではキャパシタの信頼性のほうに注意が必要)。大電流を出力する場合は、放熱設計が必要になる場合もありますが、それらは、アプリケーションが決まってから再考してください。最大負荷電流が大きい方が安全ですが、サイズも消費電力も大きくなりますので、手持ち部品の中から、XC6202P502TB(出力 5.0V, 150mA, 入出力電圧差 0.67V, 自己消費電流10uA)という低消費電力タイプの製品を使用します。
主な部品の選定理由を書きましたが、特に電源供給能力が不十分だと、誤動作したりすぐ壊れたりするような信頼性のない回路になります。少なくとも、各部の電流値がどれだけ必要かは、回路の追加、変更の度に考えて、ノートに記録し、試作後に全体の消費電流と基板内の電源ラインの電圧を実測して、見積もりと一致しているか確認してください。

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